shoot or block
はてなの人気エントリなんか見てると皆同じようなバックグラウンドというかメンタリティを持った人ばかりが記事を書いている気がするので、おれは敢えてフットボールの話でも書こうかと思う。おれはこの国のことは嫌いじゃないけれど、インターネットヘビーユーザーを自称する人々が集うところでJリーグの今後の発展について熱い議論が交わされていないことに大きな失望を感じているんだ。まあ仮にあっていたとしてもだ、アビスパ福岡のフロントが松田監督を解任したことで勝手に日本のサッカー界に絶望して以来Jリーグなんて見てないからおれはそこに参加する資格はないのだけれどね。
だからまあ、こんな話はどうだろう。
「この世界には２種類の人間がいる。FWとDFだ」
キーパーと中盤はどうした？イエス、彼らがいないとゲームは成り立たないけれど、それはこの際どうだっていいんだ。いや、どうだってよくないんだが、ここではとりあえず脇においておこうじゃないか。
まず、FWに求められるものはなんだろう。それは言うまでもなくゴールだ。東洋の島国の某代表はどう思っているか知らないが、シュートを撃たないとゴールは生まれない。俺が俺がと我の強い人間ほどFWには向いている。敵DFを吹き飛ばし、あるいはDFラインの隙を突いてゴールを生み出すだけの一瞬の集中力、爆発力が求められる。FWは、99回ミスをしても1回ゴールを決めれば、それで試合に勝てればヒーローなのだ。しかしDFはと言えば、90分間絶えず敵FWを抑えてもロスタイムに1回ミスをしてゴールを決められ負けてしまえば、ファンからそれはもう凶悪殺人犯のように責められる。派手なプレーは要らないが、ミスは許されない。DFには手堅く無難に仕事をこなすことが求められる。「チームの勝利に貢献した」という同じ結果を支えているのに、この差はなんとも非情だ。もちろん、フットボールでは攻めて点を取ることよりも守り抜くことの方が簡単だとは言われるけれど。
こつこつと長い期間努力を重ねて仕事をやり遂げるDF型の人と、一瞬のひらめきや短期間の集中力で仕事をやってのけるFW型の人。その二つの仕事が同じ評価を得たとしたらどうだろう。後者の方が時間対効果が高いと言って優遇される？
おれは嫌いだが、大学入試を例に出してみよう。高校の三年間完璧な成績を修めたにも関わらず、本番の試験でミスをして不合格になってしまった人よりも、普段は飛ばず鳴かずの成績だったのに本番の試験では高い得点を叩き出して見事合格した人の方が「優秀だ」と評価されるだろう。不合格になった人に「君はずっといい成績だったから、一度のミスを気にすることはないよ」なんて言ったって本人にとっては気休めにもならないだろうね。ほら、やはりこの通りFW型の人間の方が優秀じゃないか？
まあ当然だけれど、それは間違っている。結果が求められる場面で仕事をしたか否かはともかく、だからこつこつ仕事するDF型の人間は一瞬でも結果を出せるFW型に劣っているだなんていうのは筋違いだね。ここぞという場面でも決められないFWなんて最寄りのスタジアムに行けばぼろぼろ居るだろうし、ミスばかりするから干されてるDFだっている。
結局のところ、同じ仕事をするのにも人によってアプローチが違うというだけで、優劣の問題ではないのだ。短い時間で仕事をこなす能力がないならこつこつと努力を続けて何かを為すべきだし、無難に一つ一つものごとを片付けることが出来ないならタイミングを見計らって一瞬に全てを出し切る能力を磨くべきだと思う。どちらがいいということはないし、仕事が出来るならどちらのタイプでも変わりはない。逆にDFがFWのようになろうとするのも、FWがDFのようになろうとするのもナンセンスだと思う。環境がそうさせようとするなら、むしろ環境を変えるべきだとすら思う。ここぞいう時に輝く人にとって常に一定量の仕事をこなせというのは難しいし、こつこつと仕事をする人にこの一瞬で結果を出せなんて言うのも酷だ。柳沢はDFをするべきだし、トゥーリオは、FWをすべきなんだ。
そして、当然だが、チームにFWしかいないと勝てない。DFしかいなければ負けることはないかもしれないが、同じく勝てないだろう。強いチームには優れたFWと、優れたDFがいる。適材適所、そしてチーム内でのバランスが大事なんだ。そして、これはビジネスの場面においても言えることなんじゃないかな。
そんな俺は本職がFWでして、今日、一ヶ月前に取りかかった卒業研究を終えて論文を提出しました。一年通して実験をやるというスタイルは俺には向いていないね、と自分に言い聞かせるためだけのエントリも、この辺でおしまいです。最後に、"皇帝"フランツ・ベッケンバウアー閣下の有り難いお言葉を。
「強い者が勝つのではない。勝ったものが強いのだ」
しかし最近のバイエルン弱ぇーなー。
