buona festa


おれには二人の幼馴染がいて、兄弟構成も似たその三家族十数人で十数年来、家族ぐるみの付き合いを続けている。たまの休日、誰かの誕生日、親達の結婚記念日の時にまで、皆で集まってどこかに出かけたり、ホームパーティをしたり。特にクリスマスは、毎年誰かの家で料理を持ち寄ってパーティをする習慣が今でも続いている。マライア・キャリーのクリスマスソングが流れる部屋で、ご飯を食べ、ゲームに興じ、プレゼント交換をして、その日だけは遅くまで遊んでも怒られなくて…クリスマスには、昔から楽しかった記憶しかない。


うちの両親はものを散らかしたり、片付けをしないことに対して昔から厳しかったので、おれも弟もそういった部分には敏感で、だから我が家でパーティをした後、皆が残していったゲームやらチップスやらが散乱した光景に、楽しかったパーティの後にも関わらず弟はいつも腹を立てていた。「ちょっとは片付けて行けばいいのに!」「いいとって、こういう時は」と母親が苦笑し、親父はてきぱきと「ほら、片付けるぞ」。おれは残ったクラッカーをつまみ食いしながら応、と返事をする。


大学に入って実家を出てから、あまりそのパーティには参加出来なくて、一人寂しく、あるいは"神戸独身貴族の会"で「何で彼女出来ねーの俺ら?」とボヤきながら鍋をするのがここ数年のおれのクリスマスだった。でも今年のクリスマスは、DBCLSの牧場メンバーがおれの部屋に遊びに来てくれて、ちょっとしたパーティをやった。久しぶりにクリスマス、という感じがしてすごく嬉しくて、当初の目的だった筈のHackathonは忘却の彼方、皆で料理やお菓子を食べながら夜まで楽しく過ごした。


ゲストを送り出して一人部屋に戻ってきて、荒れ果てた我が家を見た時にふと思い出したのが、そのパーティの後の片付けの記憶だった。この惨状を見たら弟はまた不機嫌になるんだろうな、と苦笑いしながら一人で片付けを始める。おれも部屋が散らかっているとイヤなタイプだけど、パーティの後の散らかった部屋は、おれはそんなに嫌いじゃないかな。パーティが終わったらまた慌ただしい日常に戻らないといけないけど、後片付けの間は楽しかった時間の余韻に浸れるからね。片付けが終わり、綺麗になった部屋を眺めて、よし、と呟く。ラジオからはまだ、クリスマスソングが流れていた。