Piazza Tasso

坂を降りて街中へと戻った後、ふらりと公園まで足を伸ばした。公園の中には、四方をフェンスに囲まれた小さなコートがあり、十数人の少年たちがボールを蹴って遊んでいる。なんとなく足を止めて、しばらくその様子に見入っていた。時間はもう夕方。昼間の暑さも和らいで、時折吹く風が汗ばんだ肌に心地いい。空の色も刻々と変わって、オレンジに染まった建物の壁面の上で、少年たちの足元から伸びた影が忙しなく動いていた。人が走り、ボールが飛び、歓声が上がる。皆、楽しそうだな。ぼんやりそう思ったのが顔に出たのかもしれない。「ねえ、混ざってきたら?」そう言われてしまい、ばつが悪そうに声の主の方を振り返った。私のことは気にしないで?そう優しく笑う顔を見て、苦笑いしながら肩をすくめ、おれは視線をコートへと戻した。「みんな楽しそう」「そうだね。あっちと一緒だ」誰とでも、何処ででも、そして…。「もう、行ってきなよ!行きたいんでしょ?」唇を尖らせ彼女がそう言った瞬間、彼らが蹴っていたボールがこちらに飛んできた。コートの中の少年たちの視線がこちらに注がれる。「大丈夫」ボールをトラップしながら返事をする。「また戻ってくるから、さ」蹴ったボールは綺麗な放物線を描いてコートの中へと戻っていく。おお、と感心したような声が隣から聞こえた。少年たちの礼を言う声に片手を挙げて応えてからおれは続けた。「今は美味しいご飯が食べたいな」「そうだね」歩き出した二人の顔から、その日は笑顔が消えなかった。