僕らがずっと前に描いていた未来が来ることは永遠になくていつだって代わりに僕らが想像もしなかった世界がここにある

"Latest Creation"の話。


要は「必要なものは何なのか」という話なんだと思う。iMac, MacBook, iPhone, そこに噂されていたタッチパネル式のデバイスが加わる、そういう流れから必然的に新しく出るプロダクトはそれらの間隙を埋めるようなものであるだろうという予測が大方だった。かくしてiPadが発表されたのだけれど、それは多くの人が言うように「ちょっと大きくなったiPhone」だった。大きな画面は魅力的だけど帯に短し襷に長し。持ち歩くには大きすぎる気もするし、しかしiPhone同様シングルタスクでありネットブックというには足りない、ましてやコンピュータと同程度には使いようもない…SteveのKeynoteを心待ちにしていた人達の多くは残念に思ったかもしれない。「こんなもの持っていても何に使えばいいんだ?MaciPhoneがあればiPadは必要ないだろう」。全くもってそうだと思う。だけど、そうじゃない。iPadはそもそもコンピュータの代替、サブマシンとして使うものではない。もちろんiPhoneの延長線で使うものでもない。じゃあ何なのか。


そもそもコンピュータに必要なものは何か?答えは色々あるだろうけれど、恐らくユーザの大多数を占めるであろう「普通の人」について言えば、コンピュータは、今や「インターネット接続用デバイス」と言い換えて差し支えないだろうね。コンピュータでなくとも、携帯電話であってもインターネットの恩恵は少なからず受けられるし、だからそれで事足りる人々はわざわざPCの前に張り付いたりしない。最早必要なのは"コンピュータ"ではなくて、「インターネットに繋がる使い易いインターフェース」、普通の人にとってはそれで十分なのだ。普通の人はDTMDTPも動画の編集もプログラミングもしない。facebookで友人とメッセージを送りあったり、YouTubeで好きなバンドのPVを見たり、気になったものをGoogleで検索したり…いや、おそらくそれでもう普通の人のコンピュータを使う用事の9割はカバーしているんじゃないかな。それにちょっと書類を作らなくてはいけない時にワープロソフトを使うくらい…iPadなら、その全てが簡単に出来る(逆に言えばそれしか出来ないのだが)。Safariブラウジングを、専用appでSNSを、YouTubeを、ゲームを、そしてたったの$10でKeynoteを。音楽も写真も簡単に管理出来ることはもうiPhoneが証明している。普通の人はそれ以上は望まないだろうし、マルチタスクでなくとも"those who aren't geeky"には全く気にならないだろう。


iPodが"大量の音楽をファッショナブルに持ち歩く"という価値観を創り、iPhoneが"常にインターネットと共にある"ライフスタイルを強化したように、iPadは"一人が一台のコンピュータ"という世界を生むのではないかと思う。誰にでも使い易く、老いも若きも皆がインターネットから簡単に利益を得られるような、そんなデバイスiPadは目指したのではないかと思うのだ。それはきっと噂されるGoogle OSが目指しているであろう"クラウドを基盤とした余計なもののない、普通の人が必要なものだけが入った使い易いPC"とコンセプトは同じだろうけれど、Googleのそれが実現することはないと思う。何故ならそれが完成したとしても、それはあくまでPCだからだ。携帯電話とiPhoneが違うように、PCとiPadは違う。教育で、ビジネスで、趣味で、もっと気軽に、もっと簡単に使えるデバイス。この先の未来に、"コンピュータが得意な人と不得意な人"という括りは、きっともうない。



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