それぞれの現在・過去・未来


東京に来て一年が過ぎた。


色々なことがあった。大学院、新しいラボ。親しかった人々と離れ、新しい仕事を始めて、うまくいったこと、うまくいかなかったこと。激変した環境のせいで、何度も叩き潰され、その度に死にそうな思いをして這い上がって。これまでは何もかも自分の力でスマートにこなせていたと思い込んでいたから、こんな泥仕合は始めてで、だから何度も心が折れそうになりながら、それでもここまでなんとか来れた。
多くの人に心配してもらって、助けてもらって、おれが今こうしていられるのもそのお陰だと思う。だけど、それに本当に気付けたのはほんの最近になってからで。今はつくづく情けない。おれはまだ何もしてない、全然スペシャルな人間じゃないのに、見栄を張って、意地になって、強い自分であろうとすることで、この苦しい一年を乗り切ったとほんの少し前まで思ってた。でもそうじゃなかった。自分の本当の想いを、今まで弱さだと思って隠し通してきたことを、それを自分で認めて、それで初めて、助けてくれる人があっての自分だと気付いた。そして、おれがそうやって自分を偽ることで、側にいてくれる人を知らないうちに傷つけていたということも。格好良い姿ばかりを人に見せようとして意地になって、だから自分が潰れそうになった時それを誰にも見て欲しくなくて、そして何より自分がそれで苦しんでいることすら認めようとしなくて、全てを失いそうになった。
ここまで自分に正直に向き合ったのは初めてかもしれない。全部剥がして、自分の中の一番純粋なものを見たとき、それはこれまでの自分からは想像も出来ないくらい、これまでのおれからすればバカみたいで、カッコ悪くて、でもこれまでの何よりも強い想いで。それを守りたいと思った。ずっと持ち続けていたいと思った。だからなりふり構わずに戦った。
これから先も色々なことがあると思う。二年目の東京での生活、その先の仕事のこと、もっと先の将来のこと。未来に何が起きるかは分からない。だけど、この一年でおれが気付いた色んなことは、きっとこれからも大切にしていかないといけないものだと思う。おれはおれのやり方で、と過去のおれなら言うかもしれないけれど、今のおれはそうは思わない。必要なのはやり方を貫くことなんじゃない。自分の想いを貫くこと。そのためなら、格好悪くてもいい、スマートじゃなくてもいい。泥臭いゴールでも一点は一点だ。もう一度、ここから。今度はおれだけのためじゃないから。